★ シリーズ~令和4年度税制改正
令和4年度税制改正において住宅ローン控除の見直しが行われました。
制度の改正内容のポイントについて紹介します。
1.適用期限について
・制度の適用期間が4年間延長されました。
令和3年末までの入居が対象となっていましたが、令和7年末までが入居期限となりました。
2.控除率について
・改正前1%から0.7%へ引き下げられました。
住宅ローンの金利が1%を下回る場合などは、住宅ローン控除額が支払利息を上回る例を是正するため控除率が引き下げられています。
3.所得要件について
・適用対象となる所得要件が合計金額3,000万円以下から2,000万円以下に引き下げられました。
4.借入限度額及び控除期間について
・契約の時期及び住宅の種類に応じて変わりました。
改正前の区分は「長期優良住宅・低炭素住宅」と「その他の住宅」でしたが、改正後は新築、買取再販住宅の場合「長期優良住宅・低炭素住宅」、「ZEH水準省エネ住宅」、「省エネ基準適合住宅」及び「その他の住宅」の4区分となりました。中古住宅の場合は「認定住宅」、「ZEH水準省エネ住宅」、「省エネ基準適合住宅」をまとめた「認定住宅等」と「その他の住宅」の2区分となりました。また、省エネ性能等の高い住宅については借入限度額が上乗せされます。
5.住宅ローン控除に係る申告手続等について
・年末調整による手続きに金融機関より発行される年末残高証明書の添付が不要となりました。
金融機関から税務署へ残高情報が直接送られるため、税務署から送付される住宅借入金等特別控除申告書のみの提出により手続きが可能となります。
今回の税制改正では控除率が減少した一方で、控除期間の延長、適用要件の緩和や環境性能に対して借入限度額が上乗せされるなどプラスの改正内容も含まれています。住宅取得の際には制度の内容についてご確認ください。
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★ インボイス制度の農協特例とは
令和5年10月1日以降、消費税の課税事業者は原則としてインボイス(取引相手:売り手である登録事業者から交付を受けた適格請求書)の保存が仕入税額控除の条件となりますので、インボイスを発行できない免税事業者の農業や漁業等を営む事業者はどのように対応すればいいか確認をしておきましょう。
取引の特殊性からインボイスの発行が困難なケースがあり、インボイスの発行を免除する特例があります。
その中に免税事業者である生産者が課税事業者にならず、インボイスの発行事業者の登録をしなくても農産物の購入者側が仕入税額控除の対象となるインボイスを受け取れる方法として「農協特例」があります。
これは、農業協同組合等が委託を受けて行う農林水産品の販売等について発行する書類は、販売時期と値段を農協等に一任する無条件委託方式かつ共同計算方式で農協等が委託を受け、生産者を特定せずに販売するものであれば、生産者である農家等はインボイスの交付義務が免除されるというものです。
すなわち、農家等が免税事業者であっても購入者が仕入税額控除ができることになります。
・無条件委託方式…売値、販売時期、販売先などの条件を付けないで委託する
・共同計算方式……一定期間における販売額を平均価格により精算する
農協等に委託せず、農家等から農産物等を直接購入する飲食店等は、インボイスが受け取れないこととなり取引の継続について検討される可能性がありますので、直接販売が多い場合は免税事業者のままでいるか、課税事業者を選択するか検討しておく必要があります。
なお農協特例とありますが、「漁業協同組合」「森林組合」「農事組合法人」「事業協同組合」であっても、無条件委託・共同計算で、生産者を特定せずに行うものであればこの特例を適用できます。
免税の農家や漁師さんは「農協特例」をつかえば、あえて課税事業者の登録をする必要はないので、今後の判断材料としてください
以下、参考になさってください。
適格請求書の交付義務が免除される取引(問32)
農協等を通じた委託販売(問37)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-07.pdf
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★ インボイス制度における立替金精算の留意点
事業を行う中で、取引先と一緒に出張をする場合があります。その場合、予約等を一方が行い、手続完了後に実額を精算することが想定されます。このような場合、金額がわかる資料を受領し、保管をしていると思いますが、令和5年10月1日から開始されるインボイス制度においても同様の処理により仕入税額控除が認められるのでしょうか?今回はこの点について説明します。
(自社、取引先、旅行会社の3社を登場人物とします)
旅行会社への予約・支払を自社分を含めて取引先が行い、旅行会社は取引内容(税率等)が記載された適格請求書を取引先へ交付します。その後、自社は取引先へ立替金額を支払うことになります。旅費に限らずですが、適格請求書の交付が自社宛と取引先宛と区分してあれば、特に問題はありませんが、自社分を含めて取引先宛に適格請求書が交付された場合は注意が必要です。
なぜなら、取引先宛の適格請求書の写しを自社が保管をするだけでは、仕入税額控除は認められないからです。この場合、追加資料として、その旅費が自社のものであることが明らかにされている資料(立替金精算書等)が必要になります。適格請求書の写しと立替金精算書等が揃って自社は仕入税額控除の適用が認められることになります。
なお、今回の事例は適格請求書の写しを準備することは容易であると思われますが、立替をしている金額・内容によっては適格請求書が膨大になり、写しを交付することが困難になる場合があり、その場合は、取引先が適格請求書を保管し、立替金精算書等を自社に交付することで仕入税額控除が認められます。
ただし、立替金精算書等において適格請求書と同様の取引内容(税率等)を記載する必要があるため、記載する内容に留意する必要があります。
国税庁の「インボイス制度に関するQ&A」の問78「立替金」にも掲載されていますので改めてご確認ください。
なお「旅費」関連になりますが、従業員の出張等に関するケースが問85「出張旅費、宿泊費、日当等」に記載があり、従業員の通勤手当については問86「通勤手当」に記載があります。取引先が立替を行う場合よりは身近な内容になると思いますので一度目を通しておくことをお勧めします。
国税庁HP インボイス制度に関するQ&A
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/qa_invoice_mokuji.htm
※問番号は更新により変わる可能性がありますので、ご注意ください。
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★ シリーズ~令和4年度税制改正
今月は賃上げ促進税制(所得拡大促進税制)についてお話します。
賃上げ促進税制については、令和3年度に税制改正で改組されましたが、コロナ禍の暮らしや経済を立て直し「成長と分配の好循環」を促すことが重要と判断され再度令和4年に改組されました。
昨年と比較して変更となった部分を紹介させていただきます。
まず初めに、賃上げ促進税制は大企業と中小企業では、税額控除の判定基準が異なります。
今回は、中小企業が活用できる賃上げ税制について説明します。
判定基準、計算方法についてはR3年度と変更はありませんので、HPを参考にしてみてください。
今回の改組で変更になった控除率の上乗せについて説明します。
1.給与の増加が1.5%未満であった場合・・・控除適用無し
2.給与の増加が1.5%以上であった場合・・・15%税額控除
3.給与の増加が2.5%以上であった場合・・・30%税額控除
4.教育訓練費増加10%以上あった場合・・・10%上乗せ
※現行の控除率15%
全て該当すると法人税額の最大40%の控除を受けることが出来ます。
適用期間は令和4年4月1日から令和6年3月31日までに開始する事業年度の2年間です。
昨年と比較して継続雇用者ではない方も対象となります。
雇用者全体の給与支給額が増加しているか確認し、決算時に活用可能か検討してみてください。
<給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除>
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5927.htm
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★ 取引先へのキャッシュバック
販売促進を目的として、商品購入者を対象にキャッシュバックを行う場合があります。消費税法において、このキャッシュバックがどのような取扱いになるかを説明をさせていただきます。
消費税法基本通達14-1-2<事業者が支払う販売奨励金等>には次のように記載されています。
「事業者が販売促進の目的で販売奨励金等の対象とされる課税資産の販売数量、販売高等に応じて取引先(課税資産の販売の直接の相手方としての卸売業者等のほかその販売先である小売業者等の取引関係者を含む。)に対して金銭により支払う販売奨励金等は、売上げに係る対価の返還等に該当する」
とあります。
消費税の計算において、「売上に係る対価の返還等」に該当する場合は、納税額の負担を減少させる効果があるため、取引先にとっても自社にとっても有利に働くことになります。
ただし、「販売数量、販売高等に応じて」行う必要があるため、それ以外の場合はこの通達とは異なる扱いになります。例えば特定の取引先にのみキャッシュバックをしたり、他の取引先より多い額をキャッシュバックすると交際費に該当することとなり、「売上に係る対価の返還等」ではなく「課税対象外取引」になります。
その場合、消費税の負担を減少させることができなくなります。特定の取引先に多くキャッシュバックをすること自体は、経営判断としてありかもしれませんが、消費税の取扱いが変わることは留意しておく必要があります。自社の目的と異なる結果にならないためにも、事前にしっかりルールを決めておきましょう。
なお、インボイス制度導入後は取引先との間で一定の記載がされた「適格返還請求書」か「奨励金請求書」の発行(交付)が必要となりますので、よりしっかりしたルール作りが大事になります。適格返還請求書等については国税庁のQ&Aに記載がありますのでこちらもご確認ください。
<質疑応答事例>
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/15/02.htm
<消費税法基本通達>
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/14/01/01.htm
<消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A>
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=67
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★ 役員昇格直後の役員賞与について
後継者不足が問題となっている昨今、将来の事業承継を見据え社員から役員に就任される等のケースがあると思います。その際、直前まで社員であった方の賞与の支給について迷われたことはありませんか?
損金算入できる役員報酬は、毎月決まった額の報酬を支払う定期同額給与が前提ですので、役員賞与分を定期同額給与とするために賞与分を12分割して毎月の役員報酬に上乗せして月額を決定することになります。
また、月額とは別に賞与として損金算入できるのは、支払額や支払日を事前に税務署に届け出する「事前確定届出給与」があります。
業績がいいから役員に賞与を支給して利益を調整することは法人税法で制限されていますので、定期同額給与や事前確定届出給与でなければ損金にならない点に注意が必要です。
その点を踏まえ、社員から役員になった人は役員に昇格した途端それまで支給されていた賞与が支給されないケースが多くありますが、たいていは賞与分を考慮して役員報酬の月額が決定されていると思います。
ただし、社員が役員となった直後に支給される賞与等の中には損金として認められるものがあります。
他の社員と同様の支給期間や支給基準で賞与を支給する場合で、就任前の社員だった期間分と認められる部分は社員に対して支給した賞与の額として認められ、会社の損金となります。
役員就任のタイミングと賞与支給日によっては、賞与を支給しても損金と認められる部分がある点をご確認いただければと思います。
使用人が役員となった直後に支給される賞与等については、国税庁HPの以下より「法人税基本通達9-2-27」をご確認ください。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_06.htm
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★ シリーズ~令和4年度税制改正
今回のメルマガより、シリーズとして税制改正の内容をご紹介したいと思います。第1回目は、改正電子帳簿保存法が2年間猶予された点についてご紹介します。
3月号でご紹介した2022年1月施行の改正電子帳簿保存法について、2022年度の税制改正により見直しがされ、条件付きで2年間の猶予期間が設けられることになりました。
2021年12月までは、電子取引データを紙で保存していれば、その電子データの保存に変えることができる措置がありましたが、2022年1月1日以後は改正電子帳簿保存法の施行により、この措置が廃止され電子データでのみの保存となりました。(消費税については引き続き書面での保存が可能です)。
しかし、中小企業や個人事業者の中には電子帳簿保存法の要件を満たすための準備(知識、時間、費用等)が間に合わない実態があるとの懸念がありました。
そこで電子データの保存要件への対応が困難な事業者の実情に配慮し、電子データの保存の義務化に経過措置として猶予期間を設け、2022年1月から2023年12月31日までは紙での保存も容認されることになりました。
ただし、あくまで電子データの保存が出来ない事について、やむを得ない事情があると税務署長が認める場合で、かつ電子取引データを紙で保存し、税務調査の際に提示・提出できるようにしてあるという条件付である点にお気を付け下さい(税務署への事前申請は不要です)。
2年の猶予期間はこの4月1日時点で既に3か月経過しており、あっという間に過ぎると思われます。猶予期間終了後、2024年(令和6年)1月1日以後に行う電子取引データについては要件に従った電子データの保存が必要になりますので、対応が必要な事業者は期限までにしっかり準備をお願いしたいと思います。
電子取引データの保存方法については以下からご確認ください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0021011-068.pdf
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★ 令和4年度から成年年齢、育児休業法、社会保険制度が見直されます
令和4年度は成年年齢の引き下げ、年金制度、育児休業なとの改正が行われます。税法に関係するものや働き方に影響するものについてご紹介します。
1.民法の改正により4月1日からの成年年齢が18歳に引き下げられます。
相続税や贈与税においては、未成年者控除や結婚・子育て資金贈与の特例などの適用年齢が20歳から18歳へ引き下げられます。また成年年齢引き下げに伴う影響が生じるものとしては遺産分割協議の特別代理人の指定などがあります。
2.令和3年6月に改正された育児介護休業法が段階的に施行されます。
4月から事業者は育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠、出産の申出をした労働者に対する個別の周知、意向確認の措置が義務付けられます。また、10月からは育児休業の分割取得が可能になるなど有期雇用労働者の育休取得要件が緩和されます。
参考 厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
3.社会保険、年金制度についての改正点は以下の通りです。
・10月から従業員が101人以上の企業で働くパートなどの短時間労働者の社会保険の加入が義務化されます。週の所定労働時間が20時間以上月額賃金8万8千円以上など一定の条件を満たせば、厚生年金と健康保険に加入しなければなりません。
・年金の繰り下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられることにより、受給開始時期は60歳から75歳の間で選択が可能となります。
・在職老齢年金制度の見直しが行われ、賃金と年金の月額合計による支給停止基準が28万円超から47万円超に緩和されます。
参考 日本年金機構HP
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/0228.html
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★ ふるさと納税の申告手続きの簡素化
令和3年分所得税確定申告からふるさと納税の申告が簡素化されました。
今回はふるさと納税について、制度の概要を含めて改めてご紹介します。
1.ふるさと納税制度の概要
ふるさと納税制度では、地方公共団体に寄付を行った場合に寄付額のうち2,000円を超える部分について上限はありますが、所得税及び住民税の寄付金控除を受けることができます。
詳しい制度の内容につきましては下記に国税庁のリンクを載せておきますのでご覧ください。
<国税庁HP~ふるさと納税>
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1155.htm
2.申告手続き簡素化
令和2年度までは寄付金控除をうけるために、5団体を超える自治体に寄付を行った場合は、確定申告書に寄付金の受領書の添付が必要とされていました。この受領書は、各団体から寄付ごとに発行される為、複数の寄付がある
場合には保管等の手間がありました。
令和3年度の確定申告からは、寄付ごとの「寄付金の受領書」に代えて特定事業者が発行する「寄付金控除に関する証明書」を添付することで、寄付金控除を受けることが可能となりました。
下記に特定事業者の一覧を載せておきますので来年度からの確定申告の参考にしてみてください。
<国税庁HP~国税庁長官が指定した特定事業者>
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/koujyo/kifukin/tokutei.htm
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★ シリーズ~令和3年分の所得税確定申告の留意点
確定申告の期限も残り約2週間となりました。今回は確定申告書に記載されている「扶養控除」について説明をさせていただきます。確定申告に限らず、年末調整においても重要な内容になり、税務署から指摘されることが多い内容でもあります。
申告内容が誤っていると不足税額と延滞税を徴収されることになりますので、ぜひ知っておいてください。なお、今回説明をする「扶養控除」は所得税法上の内容になり、社会保険上の要件等とは異なりますので注意してください。
「扶養控除」とは、納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合に、所得の計算において一定額を控除できる制度です。ではどのような方が控除対象扶養親族に該当するかは、その年の12月31日時点で、次の4要件の全てに該当する方となっています。
1.配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること
2.納税者と生計を一にしていること
3.年間の合計所得金額が48万円以下であること
4.青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
上記の4つの要件をすべて満たしている場合に控除が受けられますが、一番のポイントは3の合計所得金額の確認です。
皆様は家族の収入内容や金額を正確に把握をしていますか?「〇万円くらい」といった概算はわかっていても正確な金額の把握ができている方は少ないのではないでしょうか?
対象になるか否かの判定については正確な金額を把握することが重要となります。
対象にならない方を扶養控除とした場合、不足税額と延滞税を納付することになります。概算になりますが、税額は誤った控除額に税率を乗じて計算をします。
所得税率は納税者の所得額に応じて変わり、5%から45%の税率が適用されます。例えば税率30%の納税者が、本来対象にならないが、63万円の控除額を適用した場合、63万円×30%=18.9万円の不足税額となり、更に延滞税が必要になります。
そのため、扶養親族がアルバイト等で普段より数万円多く収入を得たことで、扶養対象から外れ、多く得た収入以上の税負担がふえる事もあり得ます。
確定申告や年末調整においては、手引き等を確認することで誤りを防ぐことができます。参考に国税庁のリンクを貼っておきますので気になる方はぜひ確認をしてください。また、今回は割愛しましたが、配偶者控除・配偶者特別控除についてもご確認ください。
<扶養控除>
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
<同居の範囲>
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/32.htm
<配偶者控除>
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
<配偶者特別控除>
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
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★ 電子取引書面出力についてのポイント、電子保存は必須
今年の一月から電子取引の保存方法が改正され電子取引については書面出力保持が廃止されました。
そこで今回はこの改正について誤解しやすい点について説明いたします。
まず初めにこの改正に至った背景に、受領した電子データと出力した書面との同一性が十分に確保されないといことがあります。
書面に出力しての保存は、改ざん防止措置は一切なく、改ざんされていても確認ができないことが大きな問題としてありました。
上記の点から電子取引を書面での保存ではなく、電子での保存が義務づけられました。
ここで注意すべきポイントは、電子取引の保存は電子で行うのが義務ですが、書面での取引は、現状通りの保存方法で変更なしという点です。
どちらも書面での保存が禁止されたと誤解のないよう今一度確認をお願いします。
また、電子保存さえできていれば、それを書面に出力して経理業務を行うことは禁止されていません。経理業務の運用は紙ベースで行い、保存のみ電子データで行うことを検討してみてください。
電子取引の保存方法については下記のリンクからご確認ください。
<電子取引データの保存方法をご確認ください~国税庁のチラシ>
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0021011-068.pdf
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★ 有給休暇の時季変更権についてご存知ですか
有給休暇の時季変更権という言葉を聞かれたことがおありでしょうか?
会社は原則として社員から有給休暇取得の申請があった場合、社員の請求する日に取得させなければなりませんが、時季変更権とは企業側が社員が申請した有給取得時季を変更する権利のことです。
有給休暇は本来、たとえ申請のあった日が会社の繁忙期であったり、長期に及ぶ申請であっても休暇の理由に関わらず労働者の権利として与えなければなりません。
しかし、「使用者は規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季に与えることができる」と労働基準法第39条第5項により定められており、申請者に取得時季の変更を求めることが出来ます。
時季変更権が認められるのは、例えば業務の繁忙期に「明日から20日間」のように、急に長期間の有給休暇を申請されたり、同時期に複数の従業員が申請した場合等で代替人員の確保が間に合わない場合で、あくまで「事業の正常な運営を妨げる場合」のみ適用できます。
ただし、このような場合であっても事業所の規模や業務内容、職務の性質、申請した従業員の職務内容等を考慮し、使用者は出来る限り希望通りに有給休暇を取れるよう配慮したうえで、それでも人員調整に限界がある場合に行使が可能となりますのでご注意ください。
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★ シリーズ~令和3年分の所得税確定申告の留意点
本年も確定申告の時期が到来し、すでに還付申告は1月1日から始まっていますので「もう申告は済んだよ」という方もいらっしゃいますが、多くの方は2月16日から3月15日までに申告をされることになります。
申告・納税の手続きにおいては誤りや漏れがなく行う必要がありますので適切、正確な情報収集をするように心がけていただきたいと思います。
さて、今年の確定申告(令和3年分)の留意すべき事項で主なものは次のとおりなのですが広く大勢の方に影響のある増税等はなく、申告手続きの一部が電子化・簡略化されたり、ほとんどの申告書類において押印義務が廃止されるなど申告・納税環境の整備がメインとなっているように感じます。
1.住宅ローン控除の特例の期限延長・要件緩和
2.登記事項証明書(不動産・法人)の添付省略
3.退職所得課税の見直し
4.税務関係書類における押印義務の見直し
5.青色申告特別控除の改正
6.国等が行う保育その他の子育てに対する助成事業支給金の非課税措置
<国税庁ホームページのリンク>
●令和3年分確定申告特集
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/index.htm
●令和3年分の確定申告においてご留意頂きたい事項
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/ryuiten.pdf
●確定申告書等の様式・手引き等
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/syotoku/r03.htm
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★ 長期化するコロナ禍での意外なリスク
全国的な新型コロナ感染症拡大により、日常生活や仕事面で人との対面や外出が制限されるようになり約2年が経過しました。
仕事面だけでなく休日の過ごし方も変わり、健康に不安を感じている方も増えていると思いますが、一般的に65歳以上の方は体調面において認知症を発症したり症状の悪化というリスクが高まっているようです。
これは中小企業経営者として事業の舵取りを行う社長にとって大きな問題ですので、経営者が認知症を発症した場合の経営に与える影響について考えてみました。
まず、業務において必要な経営判断が難しくなります。その結果、取引先や金融機関の信用が低下する恐れがあります。認知症により意思能力がない状態では、取引先との契約の無効や取り消しとなり、取引の継続が出来ない状況も考えられます。また、金融機関との信頼関係が崩れると運転資金や設備資金の確保が難しくなる可能性があります。
これらは事業承継にも波及し、後継者の負担を増加させるかもしれません。社長本人の不動産や預貯金、自社株を処分できない等、個人の資産管理問題も発生する可能性があります。
認知症対策としては
・ 民事信託で財産管理を行う
・ 成年後見制度を利用する
・ 自分以外で議決できるように配偶者や子供等に自社株を持たせる
等が考えられます。
認知症は65歳以上の6人に1人が発症していると言われています。
意思能力が低下してからでは対策が取れなくなりますので、社長ご自身が将来に備えて認知症リスクについて考えていただき、自社とご自身のために必要と思われる対策を検討されてはいかがでしょうか。
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★ リベートを受領した場合の会計処理について
リベートの受領に関しては、税務調査において指摘されることがありますので会計処理については注意が必要です。論点のひとつとなる所得の帰属の考え方について紹介します。
リベートが誰に帰属するものであるかは、リベートを得ていた者の認識だけではなく、リベートが支払われることとなった経緯や目的、支払の根拠や算出方法、現実に授受した者の地位、権限、事業との関連性の程度、取引関係者の認識、使途等、リベートの授受に関する諸般の事情を総合的に考慮して判断することとなります。
リベートが取引に関連したものであり、法人に帰属するものと総合的に判断される場合には個人が受領し費消してしまっていたとしても本来は法人が受領すべきものであり、そのリベートは法人の雑収入として収益に計上されることとなり、個人への求償権が発生します。
リベートを支払う側は、法人に払っていると認識している場合には、令和5年10月1日以降はリベートについても適格請求書又は適格返還請求書の交付が必要になります。
(参考)
法人税法11条 実質所得課税の原則
資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。
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★ 新年のごあいさつ
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
旧年中は、格別のご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
昨年末、令和4度税制改正大綱が閣議決定となり公表されました。
岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の柱のひとつとされる「賃上げ税制」ですが、果たして企業は給与引き上げに動くことが出来るのか疑問視する向きも多いのではないでしょうか。
そのような状況下、弊所と致しましては、事務所経営理念である「自利トハ利他ヲイフ」に則り、本年の事務所行動目標を「共感:共に感じる」「共動:共に動く」「共創:共に創る・未来を創る」と決めました。
所長・スタッフ一丸となって、関与先企業様・地域企業様に満足していただけるよう、真摯な態度で寄り添いながら、しっかりご支援を行って参る所存でございます。
本年の干支は壬寅(みずのえ・とら)、冬が厳しいほど春の芽吹きは生命力に溢れ、華々しく生まれる年になるということのようです。
まさに、コロナ禍の長かったトンネルを脱出し、経済活動の復活に向けて明るい兆しが見えて来る年になることを期待して止みません。
皆様のご健康とご多幸を心から祈念致しまして、新年のご挨拶とさせていただきます。
本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
最後に、本年も、メールマガジンをより一層良いものにして皆様にお届けいたしたく、スタッフ一同意気込んでおります。
引き続きのご愛読のほど、重ねてお願い申し上げます。
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★ シリーズ~令和4年度税制改正速報
12月24日に令和4年度税制改正が成立しました。主な事項は以下の通りです。
法人課税
・所得拡大税制の見直し
・オープンイノベーション税制の拡充
・貸付用少額資産の損金算入制度の見直し
・外形標準課税対象法人の所得割の軽減税率の見直し
・5G導入促進税制の見直し
消費課税
・適格請求書等保存方式(インボイス制度)に関する見直し
個人所得税・資産課税
・諸控除の見直し
・住宅ローン控除の延長と見直し
・住宅取得資金の住宅取得資金の贈与税非課税措置の延長と見直し
・事業承継税制に関する特例承継計画の提出期限の延長
・固定資産税の軽減措置の延長・拡充
納税環境整備
・財産債務調書制度等の提出義務者の拡大
・電子データの保存に関する整備(電子帳簿保存法改正)
活用できるものは期限を確認し早めの検討を始められることをお勧めします。
上記以外にも様々な改正が行われますので、詳しくは財務省HP「税制改正の概要」をご確認ください。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/index.html
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★ マイナンバーカードの活用 ~最大2万円分のポイント付与~
皆様はマイナンバーカードを既にお持ちでしょうか?マイナンバーカードは行政サービスの手続きを効率的に進めることを目的の一つとして創設されたものですが、普及率は人口のおよそ40%の5000万人余りとなっており、思うほど進んではいないようです。
普及を推進するために、政府はマイナンバーカード保有者を対象に最大2万円分のポイントを付与することを決定しました。時期等詳細は決まっていませんが、2022年中に開始する予定となっています。2万円分のポイント付与については次の3種類があります。
1.カードの新規取得 5000円
2.健康保険証としての利用登録 7500円
3.給付金用口座の事前登録 7500円
※ただし、既にマイナポイント事業で上限5000円分のポイントをもらっている場合は1の新規取得は対象外となります。
マイナンバーカードについては色々な考えがあり、作成に消極的な方もいるかと思いますが、事前に給付金用口座を登録しておくことで、有事の際に給付金を速やかに受け取れる仕組みを政府は検討しています。自分自身のためにもなりますので、この機会にマイナンバーカードの作成を検討してみてはいかがでしょうか?
浜田市役所では申請方法として「交付時来庁方式」と「申請時来庁方式」があります。ちなみに私は「交付時来庁方式」により自宅のパソコンで手続きを行いました。個人情報等の入力は必要ですが自宅なので落ち着いて手続きをすることができました。
申請から約1か月後に通知書が届き、市役所窓口にてマイナンバーカードを受領し、無事に5000円分のポイントを取得できました。これから取得をされる方の参考になればと思います。ただ、申請件数が増加すると窓口が混雑したり、申請から通知までに時間がかかるかもしれませんので、作成をされる場合は早めに手続きをすることをお勧めします。
<浜田市役所のHP>
https://www.city.hamada.shimane.jp/www/genre/0000000000000/1000170010032/index.html
その他の市町村についてはお住まいの市町村の自治体でご確認ください。
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★ 個人事業主への退職金は経費になるのか
確定申告の時期が近づいてきました。
今回は個人事業で、専従者への退職金を、経費にできるのかということについてお話します。
初めに答えを言わせていただくと経費にすることはできません。
青色申告者は一定の要件の下に、専従者に実際に支払った給与の額は、必要経費になります。
ただし、必要経費に算入できるのは、専従者給与(賞与を含む)に限定されているため、退職金は必要経費に算入できません。専従者に直接支払う退職金は経費にはなりませんが、中小企業退職金共済に加入すれば掛金を必要経費とすることが出来ます。
また、小規模企業共済に加入すれば、掛金が契約者である専従者の所得控除になるので、どちらも一定の節税効果があると言えます。
ここで注意ですが、同時にこの2つの共済に入ることはできない為、どちらが適しているかを検討してみてください。
いずれも、短期的に退職金が準備できるものではないので、早目の加入をおすすめします。
またすでに加入されている方については、金額の変更(増減)も可能ですのでこの機会に検討してみてください。
中小企業退職金共済ホームページ
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/
小規模企業共済ホームページ
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/about/installment/index.html
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過去の記事を以下に掲載しています。(PDFにてダウンロード可)
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★ 新年のごあいさつ